夜の店は暗くしたい。ところが法律は暗くしすぎるなと決めています。しかも守る数字は、業態によって5・10・20と変わります。
ムービングライトを入れる相談で、いちばん最後に出てくるのがこの話です。照明の話ではなく許可の話なので、先に決着をつけておいたほうがいい——というのが当社の考えです。ここでは条文の原文をもとに整理します。
照度の決まりは業態ごとに別々の条文にあります。同じ「夜の店」でも、当たる条文が違います。
| 店の実態 | 法律上の呼び名 | 根拠 |
|---|---|---|
| 接待がある(ホストクラブ・キャバクラ・ラウンジ・キャバレー) | 風俗営業 1号 | 法2条1項1号 |
| 接待はないが暗くして飲食をさせる(暗いバー等) | 風俗営業 2号 (低照度飲食店) | 法2条1項2号 |
| 深夜に客を遊興させて酒を出す(ナイトクラブ・DJのいる箱) | 特定遊興飲食店営業 | 法31条の23ほか |
| 深夜0時以降に酒を出す飲食店(バー・居酒屋) | 深夜酒類提供飲食店営業 | 法32条 |
2号営業の定義は、条文がそのまま「暗さ」で書かれています——「営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの」(法2条1項2号)。つまり暗くすること自体が営業の種類を決めているわけです。
法律の書き方は少し独特です。風営法14条は「…国家公安委員会規則で定める数値以下としてその営業を営んではならない」と書いてあります。「5ルクス以下にしてはいけない」=5ルクスを下回るな、という意味です。上限ではなく下限です。
さらに1号営業では、この照度を保てることが許可そのものの条件になっています。規則7条は、構造及び設備の技術上の基準として「照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること」と定めています。営業中に数字を守る話であると同時に、そもそも守れる設備になっているかを問われているということです。
ここが混同されやすいところです。
2号営業(低照度飲食店)は、定義が「10ルクス以下として営むもの」。ところが守るべき照度は、規則31条1号で1号営業と同じ5ルクスと定められています。
つまり——10ルクスより暗くしなければ2号営業にならず、5ルクスより暗くしてはいけない。実際に運用できる幅はおおむね5〜10ルクスの帯ということになります。「暗ければ暗いほどいい」ではありません。
※ どの営業に当たるか、どの許可が要るかの判断は、所轄の警察署と、風営法を扱う行政書士の領分です。このページは照明設計の側からの整理であって、許可の可否を判断するものではありません。
「店内の照度」と言われると、部屋全体の明るさを想像しがちです。条文はもっと具体的で、測る場所を細かく指定しています(規則30条/特定遊興飲食店は95条/深夜飲食店は100条。いずれもほぼ同じ構造です)。
| 客席の状態 | 測る場所(条文の言い方) |
|---|---|
| テーブルなど飲食物を置く設備がある | 当該設備の上面及び当該上面の高さにおける客の通常利用する部分 |
| 設備がなく、椅子がある | 椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分 |
| 設備も椅子もない | 客の通常利用する場所における床面(条文では「畳又はこれに準ずるものが敷かれている場合にあつては、その表面」) |
見落とされるのが「当該上面の高さにおける客の通常利用する部分」という一文です。テーブルの天板の上だけを明るくすれば済む、という話ではありません。同じ高さの水平面——席まわりで客が普通に使う範囲が対象になります。しかも測るのは水平面の照度です。壁や天井を派手に照らしても、この数字には効きません。
実地の調査では、席ごとに照度計が当てられます。「店の平均」ではなく、暗い席が1つあればそこが問題になります。
ここが照明設計の仕事になります。考え方は単純で、「見せる光」と「席の明るさ」を別々に持つことです。
正直に書くと、「派手にしたい」と「数字を守る」は、どこかで必ずぶつかります。そのときに削るのは席の明るさではなく、演出の側の作り方です。当社が照明の設計と電気工事を一緒にやっているのは、この調整を他人任せにできないからです。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「暗ければ暗いほど雰囲気が出る」 | 下限がある。1号営業は5ルクスを下回れない。しかも維持できる構造・設備であることが許可の条件(規則7条) |
| 「調光で全部絞ればいい」 | 測られるのは席ごと。全体を絞れば、暗い席から順に問題になる |
| 「テーブルの上さえ明るければいい」 | 条文は当該上面の高さにおける客の通常利用する部分まで含めている |
| 「うちは深夜のバーだから暗くていい」 | 深夜酒類提供飲食店は20ルクス。ここに挙げた中でいちばん明るくしておく必要がある |