スモークマシンと火災報知器鳴る理由と、条文に沿った直し方

「スモークを焚くと火災報知器が鳴ってしまう」——これは機械どうしの相性の話ではありません。その場所に付いている感知器の種別の話です。

天井に吊られたムービングヘッドから、オレンジと紫の光の筋が下に伸びている。空気には薄く煙が入っている
光の筋が見えているということは、その空気に粒が浮いているということです。天井の感知器も、同じ空気を吸っています。

ネットで検索すると「感知器にナイロン袋をかぶせる」「反応しにくいスモーク液を選ぶ」といった話が並びます。前者は消防用設備の機能を止める行為で、当社は絶対に行いません。後者は運任せです。条文には、これよりずっとはっきりした答えが書いてあります。

1.なぜ鳴るのか——感知器が見ているもの

自動火災報知設備の感知器は、大きく熱で感じるものと煙で感じるものに分かれます。

種別何で火事だと判断するかスモークへの反応
差動式(熱)周囲の温度が急に上がったことで作動する煙そのものには反応しない
定温式(熱)あらかじめ決められた温度に達したことで作動する同上
光電式(煙)感知器の中に入った粒が光を散らすことで作動する反応する。粒の出どころは区別できない
イオン化式(煙)感知器の中を流れる微弱な電流が、入ってきた粒で乱れることで作動する反応する

スモークマシンもヘイザーも、やっていることは空気に細かい粒を混ぜることです。前のページで書いたとおり、光の筋が見えるのはその粒が光を跳ね返すからです。光を見せる仕組みと、煙感知器が火事を見つける仕組みは、まったく同じ現象を使っています。機械の側で「これは演出の煙です」と見分けることはできません。

とくにヘイズは粒が細かく、長い時間ふわりと漂うように作られています。光を見せる目的にはいちばん向いていますが、天井まで届いて滞留するという意味では、感知器にとってもいちばん紛らわしい相手になります。

2.条文は「そこに付けてはいけない」と書いてある

消防法施行規則の第23条第4項第1号ニは、煙感知器および熱煙複合式スポット型感知器を設けてはならない場所を挙げています。(イ)から(チ)まで8つあり、そのうちの一つが——

号設けてはならない場所(原文の語)
(イ)じんあい、微粉又は水蒸気が多量に滞留する場所
(ロ)腐食性ガスが発生するおそれのある場所
(ハ)厨房その他正常時において煙が滞留する場所
(ニ)著しく高温となる場所
(ホ)排気ガスが多量に滞留する場所
(ヘ)煙が多量に流入するおそれのある場所
(ト)結露が発生する場所
(チ)(イ)から(ト)までのほか、感知器の機能に支障を及ぼすおそれのある場所

条文が名指ししているのは厨房ですが、「その他正常時において煙が滞留する場所」と続きます。営業中つねにヘイズを流しているフロアが、この文言に当たるかどうか——ここが、スモークと火災報知器の問題の入口です。

当たると判断されるなら、話は逆になります。感知器が敏感すぎるのではなく、その場所に煙感知器を置いていることのほうが、条文の想定から外れているということです。

8
付けてはいけない場所
規則23条4項1号ニ(イ)〜(チ)。うち7つが具体的な場所で、最後の1つは受け皿の規定です
1
替わりに適応する種別
「煙が滞留する場所」に適応するとされているのは定温式(特種又は一種)ただ一つ。別表第一の二の三
75℃
その定温式の上限
公称作動温度は75度以下のものとする、と同表の備考三に定められています

3.では何に替えるのか——別表第一の二の三

規則第23条第6項は、上のニに当たって煙感知器を設置できない場所について、別表第一の二の三に従い、その場所の区分に応じて適応するものとされる種別の感知器を設けると定めています。放っておいてよいのではなく、別の種別に改めるという筋です。

その別表を、うちの言葉に直さず原文の区分のまま引くと、こうなっています。

場所の区分差動式
スポット型
差動式
分布型
定温式
特種又は一種
補償式
スポット型
ニ(ロ)腐食性ガス○○
ニ(ハ)正常時に煙が滞留する場所○
ニ(ニ)著しく高温○
ニ(ヘ)煙が多量に流入○○○○
ニ(ト)結露○○

「煙が滞留する場所」の行だけ、○が一つしかありません。選べる余地がほとんどない代わりに、迷う余地もありません。定温式の特種または一種、公称作動温度は75度以下——ここまで表と備考に書かれています。

やってはいけない3つ

鳴るのを止める方法と、条文に沿って直す方法は、まったく別の話です。

①感知器に袋やカバーをかぶせる。広く出回っているやり方ですが、消防用設備の機能を止める行為です。営業中ずっとかぶせたままなら、その部屋は火事を検知できません。しかも上の条文を知っていれば、そもそもかぶせる必要がないことが分かります。

②感知器を外す、配線を切る。設置は義務であって、店の判断で減らせるものではありません。

③受信機で止めたまま営業する。点検や工事のあいだ一時的に止めるのは正規の操作ですが、鳴るから止めっぱなしにする、が常態化している店は実際にあります。戻し忘れた夜に何かあれば、失うものが大きすぎます。

※ 感知器の種別変更は消防用設備の設計変更にあたります。店が自分で選ぶものではなく、所轄の消防署との協議と、資格を持つ者の工事が要ります。

4.店の中には、替えられない場所がある

ここがいちばん実務的なところです。同じ建物でも、煙感知器でなければならないと決められている場所があります。規則第23条第5項は、次の場所について煙感知器(一部は熱煙複合式スポット型でも可)を設けなければならないとしています。

場所条文スモークとの関係
階段・傾斜路23条5項1号煙感知器。種別を替える話ではない
廊下・通路23条5項2号キャバレー・ナイトクラブ等(令別表第一(二)項)を含む用途で必要
遊興のための個室
条文の語は「遊興のための設備又は物品を客に利用させる役務の用に供する個室」
23条5項3号の2カラオケボックス等(同(二)項ニ)。煙感知器または熱煙複合式スポット型

つまり、フロアの感知器をどう扱うかという話が仮に片づいても、そのフロアから階段や廊下へ煙が流れれば、そちらで鳴ります。個室を持つ店なら、個室はまた別の扱いになります。

だから当社は、演出の設計と一緒に煙をどこに置くかを決めます。スモークマシンの吹き出しの向きと高さ、空調の吸い込み口との位置関係、扉の開閉でどちらへ流れるか。照明の当て方より先に、空気の流れのほうを決めることさえあります。光を見せるのに必要なのはフロアの空気であって、階段の空気ではありません。

5.進め方

正直に書いておくと、すべての店で希望どおりに替えられるわけではありません。建物の条件や所轄の判断で、フロアの感知器はそのままという結論になることもあります。その場合は、焚く量と場所のほうを設計で寄せていくことになります。「必ず替えられます」と言う会社があれば、それは条文を読んでいないか、所轄の判断を軽く見ています。

6.当社がやっていること

当社はステージ照明の会社であると同時に、電気工事の会社です。ムービングライトを吊って配線するのも、スモークをどう置くかを決めるのも、同じ現場の同じ話として扱います。

やること中身
現地で天井を見る感知器の位置と、空調の吸い込み口、扉の位置。図面だけでは決まりません
煙の置き場所を決める吹き出しの向きと高さ。フロアに留め、階段や廊下へ送らない配置に
機種を選ぶスモークマシンは全4機種。噴出量4,000cuft/minの大容量エアカラムスモークと、8,000cuft/minのミストマシン(1,500W)、そして500〜900W級の小型機を使い分けます
納品時に量を詰める40坪12台の構成ではスモークマシンを2台入れています。多く焚けばよいものではなく、光が見える最小限に合わせます

感知器そのものの扱いは、所轄消防と、消防用設備の側の資格を持つ者の領分です。当社は照明と工事の側から、その協議に必要な材料(どこにどれだけ焚くのか)を用意する立場で関わります。

7.次に読むもの

条文は e-Gov 法令検索で公開されている消防法施行規則の原文(第23条・別表第一の二の三)を確認して書いています。ただし個々の建物にどう当てはまるかは所轄消防の判断です。このページは一般的な説明であって、届出や工事の可否を保証するものではありません。書いているのは、クラブ・ホストクラブ・ラウンジ・ライブハウスにステージ照明を実際に施工している電気工事会社(日本ネオン株式会社)です。

ムービングライトとは →スモークマシンを見る

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