ムービングライトの値段・安い・中古値段が違う理由、安い機種と中古で確かめる表示、買ったあとの年数

「ムービングライト 値段」で検索すると、同じ名前で一桁違う機種が並びます。何が違うのか。安いものは何を削っているのか。中古はどこを見ればよいのか。当社は据え付けの月額リースをしている会社なので、買う人に都合の悪い話も、当社に都合の悪い話も、両方そのまま書きます。

黒い筐体のムービングヘッド1台。ベースの上にヨークがあり、レンズを正面に向けている
外から見える形はどれも似ています。値段の差は、光源・光学・制御・筐体という「中の欄」に出ます。

買うか借りるかの損得の全体は買うのとリース、どっちが得かに書きました。この記事はその手前、値段そのものの読み方です。仕様の欄・法律の表示・税の年数という3つの物差しで、「安い」と「中古」を分解します。

1.同じ「ムービングライト」で値段が変わる理由——店の言葉を仕様の欄に直す

値段の差は、ほとんどが下の表の右の欄の差です。当社の機材一覧に載せている機種の実際の幅で示します。

店の言葉仕様の欄(値段を決めているところ)当社の機材一覧での幅
「明るい」光源の出力(W)と光源の種類(LEDか放電灯か)小型ムービングヘッド 100W級〜カッティングライト 700〜800W級(ミニムービングヘッド・ビームライト)
「よく動く」パン・チルトの角度と速度、無限回転の有無水平540°・垂直270°が標準。Y軸無限回転の機種もある(エフェクトライト)
「色がきれい」LEDの構成(RGBW 4in1など)と色温度の可変幅RGBW 4in1×12灯/色温度2,500〜8,000K可変(ウォッシュ)
「ゴボが出る」「細い」パターン枚数・プリズム面数・ズーム幅・最小ビーム角8パターン×8色×18プリズム(小型)/ズーム5.5〜60°(ウォッシュ)/最小ビーム角1.5°(ビーム)
「卓でいろいろできる」DMXのチャンネル数とモード数12ch(小型)〜14〜84ch(両面無限回転ライトカーテン)
「長持ち」光源寿命の公称値約20,000時間〜約50,000時間(ビームライトの中でも機種で差がある)
「業務用」「しっかりしている」質量・筐体の作り・防水等級正味3.6kg〜15kg/屋外用は防水IP55

安い機種は、この表の「明るい」と「よく動く」だけを残して、チャンネル数・ズーム・寿命・筐体から削られていることが多い、というのが当社の見方です(機種選定の経験で、統計ではありません)。削られた欄は、買った日には分かりません。分かるのは、卓に組んで「その動きは出ない」と気づく日か、光量が落ちて「もう暗い」と気づく日です。

2.「安い」の裏で削られやすいもの——PSE表示と、その意味

値段の話で一つだけ法律が関わるのが電気用品安全法です。この法律の「電気用品」は、「一般用電気工作物等(略)の部分となり、又はこれに接続して用いられる機械、器具又は材料であつて、政令で定めるもの」(2条1項1号)。低圧で受電している普通の店のコンセントにつなぐ器具は、ここに入ります。政令(施行令)の別表第二は「エル・イー・ディー・電灯器具(定格消費電力が一ワット以上のものに限り、防爆型のものを除く。)」(九の(一二))を挙げていて、放電灯を使う機種も同じ九の(一一)「その他の白熱電灯器具及び放電灯器具」に入ります。つまり、店で使うLEDのムービングライトは、1Wを超えた時点で全部この法律の対象です。

1
W|対象になる下限
施行令 別表第二 九(一二)。定格電圧100V以上300V以下・50/60Hzの交流用が対象(九の柱書)
27
条|販売の制限
表示(PSEマーク)のない電気用品は、販売も「販売の目的で陳列」も禁止。新品と中古を分けていない
28
条|使用の制限
電気工事士は、表示のない電気用品を電気工作物の設置・変更の工事に使えない

27条1項の原文はこうです。「電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、第十条第一項の表示が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。」これは売る側の義務で、買った店に罰があるわけではありません。ただ、買った側に効いてくることが3つあります。

ここから先は当社の経験です。安い機種で表示と一緒に削られていることが多いのは、日本語の取扱説明書、交換部品の供給、保証の窓口の3つ。値段の差の一部は、この3つを誰が持つかの差です。買ってから自分で持つか、値段に含めて買うか、当社のように月額に含めるか——どれが正しいという話ではなく、誰かが必ず持つという話です。

3.中古で確かめること——欄ごとに「根拠は何か」を分けて

スタンドに載せたムービングライト数台と、並べられた黒いフライトケース
中古の機材は、ケースの傷より「光源の使用時間」と「表示」を先に見ます。外観は値段に出て、中身は値段に出にくいからです。
確かめる欄何が分かるか根拠
PSEマークと届出事業者名27条は「販売」を規制していて、新品と中古を分けていない。旧法(電気用品取締法)の表示が付いた古い品は経過措置で扱いが別なので、経済産業省の案内で確かめる電気用品安全法27条・施行令附則
光源の使用時間公称寿命(当社の機材一覧の機種で約20,000〜50,000時間)から引く。LEDは切れる前に暗くなるので、「点く」は「使える」と同じではない当社の機材一覧の公称値/LEDの劣化の扱い
ファンとパン・チルトの音軸受けとファンの摩耗は音に出る。毎晩回す店では最初に壊れる所当社の現場の経験(数値ではない)
落下防止ワイヤの取付部と吊り金具落下距離15cmでワイヤには器具質量の約10倍以上の衝撃。一度衝撃を受けたワイヤは交換。中古はワイヤの履歴が分からないJATET 安全手帳(吊り方と落下防止に記載)
交換部品が手に入るかランプ・ファン・基板・ゴボ。届出事業者が国内にいる機種は、この入手性が値段に入っている当社の機種選定の経験
DMXで全チャンネルが動くか卓につないで、仕様表のチャンネル数ぶん全部動かす。「単体で点く」だけの動作確認では、卓で使えないチャンネルが残る当社の引き渡し時の確認項目(設置と運用)

中古で安く買えるのは、この表の「根拠が経験」の行を、自分で判断できる人です。判断できるスタッフがいる店は買っていい。いない店は、安く買った分を判断の外注で払うか、判断ごと月額に含めるかのどちらかになります。

4.買ったあとの「年数」——耐用年数表と、中古の計算式

買った機材は減価償却資産になり、年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第一で決まります。ムービングライトがどの行に当たるかは据え付け方と用途で変わり、税理士の判断ですが、候補になる行と年数は表に書いてあります。

別表第一の行細目年数当たり得る場合
建物附属設備電気設備(照明設備を含む。) その他のもの15年天井に固定し、建物の配線につないで据え付けた場合の候補
器具及び備品 9 娯楽又はスポーツ器具及び興行又は演劇用具その他のもの 主として金属製のもの10年持ち運びできる機材として扱う場合の候補
同上その他のもの その他のもの5年同上(主として金属製でないもの)

中古はここに簡便法が乗ります。省令3条1項2号は、使用可能期間の見積もりが難しい中古資産について、「法定耐用年数(略)の全部を経過した資産」は「当該資産の法定耐用年数の百分の二十に相当する年数」、「法定耐用年数の一部を経過した資産」は「当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数」と定め、「その年数が二年に満たないときは、これを二年とする」としています。1年未満の端数は切り捨て(同条5項)。たとえば法定10年の行に当たる機材を3年使った中古なら、10−3=7年に3×0.2=0.6年を足して7.6年、端数を切り捨てて7年です。

値段そのものに関わる線も2つあります。法人税法施行令133条は、取得価額が「十万円未満であるもの」を、事業の用に供した事業年度に損金経理すれば損金にできると定めています。133条の2は「二十万円未満であるもの」を一括償却資産として、取得価額の合計を「三十六で除し」事業年度の月数を乗じた額(=3年で均等)で損金にできる仕組みです。安い機種を1台ずつ買う店では、この線が「値段」の実際の重さを変えます。ここで言う取得価額は施行令54条で計算した額で、本体の値札そのものではありません。どちらの線に乗せるかは、やはり税理士に相談してください。

当社に不利なことを、先に書きます

本体の値段だけを比べると、当社は必ず高く見えます。

当社の月額には電気工事・設定・保証が入っています(リースのしくみ)。本体の値札と月額の合計を並べれば、当社のほうが高い。それは隠しません。おおむね15か月以上の運営がはっきり見えている店は、購入と比べてよく検討する価値があります(買うのとリースに書いたとおりです)。

所有権は移りません。月額を払い続けても、機材が店のものになる日は来ません。「最後は自分の物にしたい」が第一の店には、当社の形は合いません。

自分で吊れて、自分で直せる店には、当社は割高です。この記事の3章の「根拠が経験」の行を自分で判断できるなら、中古を安く買って自分で運用するほうが総額は小さくなります。数日のイベントなら、据え付けない短期レンタルの会社のほうが合います。

当社が向くのは、判断する人が店にいない店です。安く買った機材が止まった晩に誰に言えばいいか決まっていない、という状態を作らないために月額を払う——そう割り切れる店だけに、当社の形は合っています。

6.よくある誤解

誤解実際
「安いのは中国製だから」当社が扱う機種も海外製です。値段を分けるのは産地ではなく、1章の表の右の欄(出力・チャンネル数・寿命・筐体)と、2章の「誰が部品と保証を持つか」
「PSEは家電の話で、舞台照明には関係ない」施行令 別表第二 九(一二)「エル・イー・ディー・電灯器具(定格消費電力が一ワット以上)」。店のコンセントにつなぐムービングライトは対象。放電灯の機種は九(一一)
「PSEがなくても、買った店は何も言われない」買った店に罰則はない。ただし27条違反で売られた物は回収命令の対象になり得て(42条の5)、電気工事士は配線に直結する工事に使えない(28条1項)
「中古でも新品と同じ年数で償却する」簡便法がある(省令3条1項2号)。全部経過なら法定の20%、一部経過なら残りに経過年数の20%を足す。2年未満は2年
「10万円未満なら何台買っても一度に経費」133条の対象は「取得価額」で、施行令54条の計算による。値札だけで決めない。線の適用は税理士の判断
「リースは初期費用が安いから得」それだけが理由なら買ったほうがいい店が多い。当社が月額にしている理由は初期費用ではなく、点検・交換・工事の担い手(買うのとリース)

7.当社がやっていること

値段の相談を受けたとき、当社がやっていることは3つです。

8.次に読むもの

条文は e-Gov 法令検索で公開されている電気用品安全法(第2条・第10条・第27条・第28条・第42条の5)、電気用品安全法施行令(第1条・別表第二)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(第3条・別表第一)、法人税法施行令(第133条・第133条の2)の原文を確認して書いています。機種の諸元は当社の機材一覧に掲載している公称値です。耐用年数の行の当てはめと10万円・20万円の線の適用は税理士の、電気用品の表示の判断は経済産業省と届出事業者の領分で、このページは照明を据え付ける側からの一般的な説明です。「当社の経験」と記した箇所は数値の裏付けがある話ではありません。書いているのは、クラブ・ホストクラブ・ラウンジ・ライブハウスにステージ照明を実際に施工している電気工事会社(日本ネオン株式会社)です。

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