照明を何台か足した日から、営業中にブレーカーが落ちるようになった。よくある相談です。原因はたいてい「店全体の電気が足りない」ではなく「1本の回路に器具が集まりすぎている」ことです。そして、いちばんやってはいけない直し方が「ブレーカーを大きいものに替える」です。
このページでは、どの器具がどれだけ電気を使うかを当社の機材の実際の消費電力で示し、ブレーカーと電線の決まりを経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正まで入った公式PDF)の条文で確かめます。分電盤の中の工事は資格が要る作業なので、ここに書くのは「何が起きているかを店の側で見当を付けるところまで」です。
分電盤には役目の違うブレーカーが並んでいます。どれが落ちたかで、原因の当たりが変わります。
| 店での呼び方 | 法律・技術の言葉 | 落ちるのはどんな時か | 出どころ |
|---|---|---|---|
| ブレーカー(回路ごとに並んでいる小さいもの) | 配線用遮断器 | その回路に流れる電流が多すぎる時(過電流) | 電気設備の技術基準の解釈 33条 |
| 漏電ブレーカー | 地絡遮断装置(漏電遮断器) | 電気が本来の道筋から外れて地面側へ漏れた時(地絡) | 同 36条 |
| コンセントの回路(「厨房」「客席左」など) | 低圧分岐回路 | —(ブレーカー1つが守る範囲) | 同 149条 |
| 店全体に来ている太い線 | 低圧幹線 | —(各回路の元) | 同 148条 |
| 電気屋さん | 電気工事士 | —(分電盤や配線の工事ができる人) | 電気工事士法 3条 |
漏電ブレーカーが落ちたなら、電気の量の問題ではありません。36条は、電路に地絡を生じた時に「自動的に電路を遮断する装置」を施設することを求めています。漏電を量の問題と思い込んで器具を減らしても直りません。器具や配線のどこかで電気が漏れていないかを、電気工事士に見てもらう話です。このページの残りは、回路ごとのブレーカーが落ちる場合の話です。
電流は「消費電力(W)÷電圧(V)」で目安が出ます。店のコンセントの多くは100Vなので、Wの数字を100で割るとアンペア(A)の目安になります。下の消費電力は、当社の機材一覧に載せている実際の機種の数字です。
| 器具(当社の機材ページ) | 消費電力 | 100Vでの電流の目安 |
|---|---|---|
| ミストマシン(大きいほう) | 1,500W | 15A |
| カッティングライト | 700〜800W | 7〜8A |
| ミストマシン(小さいほう) | 500〜900W | 5〜9A |
| 大型PAR | 280W | 2.8A |
| ビームムービングヘッド | 150W | 1.5A |
| 小型ムービングヘッド | 100W | 1A |
※ 計算は「電流=消費電力÷電圧」で、力率を1とした目安です。実際に流れる電流は、この目安より大きくなることがあります。同じ消費電力なら、電圧が200Vの回路では電流は半分になります(器具が200Vに対応している場合に限ります。対応する電圧は器具の銘板で確かめてください)。
表を見ると、小型やビームのムービングライトは1台1〜1.5A程度で、何台か足しただけで回路があふれることは多くありません。目立つのはスモーク(ミスト)マシンです。1,500Wの機種は1台で15Aになります。
具体的に数えてみます。分電盤で「20A」と書かれたブレーカーの回路に、次の器具をつないだとします。
| つないだ器具 | 台数 | 電流の目安 |
|---|---|---|
| ミストマシン 1,500W | 1台 | 15A |
| 小型ムービングヘッド 100W | 5台 | 1A×5=5A |
| 合計 | 20A(ブレーカーの定格とちょうど同じ) | |
配線用遮断器は、条文上「定格電流の1倍の電流で自動的に動作しないこと」と定められています(解釈33条3項1号)。つまり定格ちょうどでは、すぐには落ちない作りです。ただし、そこから先に余裕はありません。同じ回路にもう1台足す、厨房の電子レンジが同じ回路だった、というだけで定格を超えます。「昨日まで大丈夫だったのに、今日は落ちた」の正体は、たいていこの「ちょうど」から先の上乗せです。
定格を超えた時にどれくらいの時間で落ちるかについて、解釈33条の33-2表は、定格電流30A以下の配線用遮断器で「1.25倍で60分以内」「2倍で2分以内」に自動的に動作することを求めています。営業の途中、しばらくしてから落ちるのはこのためです。
※ 33-2表は、電気用品安全法の適用を受けるものを除いた配線用遮断器についての基準です(33条3項)。店の分電盤のブレーカーがどちらに当たるか、実際に何分で動作するかは、そのブレーカーの製品の仕様で確かめる必要があります。ここでは「定格を少し超えたくらいでは、すぐではなく時間を置いて落ちる」という考え方として読んでください。
自分の店の回路で考えると:AIに相談する(店の写真で目安) 消費電力の少ない形はレーザー照明とビームライトの違い(4〜6Wのレーザーは消費電力35W)
「20Aで落ちるなら30Aに替えればいい」と考えがちですが、条文はそれを想定していません。分岐回路のブレーカーは、その回路の電線の太さと組で決まっています(解釈149条2項・149-1表)。
| 分岐回路を守るブレーカーの定格 | 電線の太さ(軟銅線・この太さ以上) |
|---|---|
| 15A以下 | 直径1.6mm |
| 15Aを超え20A以下の配線用遮断器 | 直径1.6mm |
| 20Aを超え30A以下 | 直径2.6mm |
| 30Aを超え40A以下 | 断面積8mm² |
| 40Aを超え50A以下 | 断面積14mm² |
20Aのブレーカーの回路には直径1.6mmの電線が使われていることがあり、30Aのブレーカーには直径2.6mmの電線が組になります。電線を替えずにブレーカーだけを30Aにすると、1.6mmの電線に30A近くまで流れても落ちない回路になります。ブレーカーは器具ではなく電線を守るためのもので、ここを外すと電線の側が熱を持ちます。コンセントも同じ表で決まっていて、20Aを超える回路には20A未満の差込みプラグが接続できるコンセントは使えません(149-3表)。
店全体の側にも決まりがあります。幹線(店全体に来ている太い線)の許容電流は、そこを通じて供給される器具の定格電流の合計以上であることが求められています(解釈148条1項2号)。回路を分け直しても、店全体の合計が幹線の許容電流を超えるなら、そこから先は契約や幹線の工事の話になります。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「コンセントが空いていれば、まだ挿せる」 | コンセントの数ではなく、同じブレーカーにつながっている器具の合計で決まる。空いている差込み口が同じ回路なら、足した分だけ同じブレーカーに乗る |
| 「ムービングライトを増やしたから落ちた」 | 当社の小型・ビームの機種で1台1〜1.5A(100W〜150W)。1,500Wのミストマシンは1台で15A。まず消費電力の大きい器具がどの回路にいるかを見る |
| 「落ちるならブレーカーを大きくすればいい」 | ブレーカーの定格は電線の太さと組(解釈149-1表)。電線を替えずにブレーカーだけ上げると、電線を守れない回路になる |
| 「定格20Aなら20Aを超えた瞬間に落ちる」 | 配線用遮断器は定格の1倍では自動的に動作しない作り(解釈33条3項1号)。少し超えた程度では、しばらくしてから落ちる |
| 「漏電ブレーカーが落ちたのも、使いすぎ」 | 漏電ブレーカーは地絡(電気が漏れた時)に動作する装置(解釈36条)。器具を減らしても直らない |
| 「延長コードで隣の部屋のコンセントから取ればいい」 | その部屋の回路に乗るだけ。どのコンセントがどのブレーカーにつながっているかは、分電盤の側から確かめる |
分電盤の中や配線を触る工事は、電気工事士でなければ作業に従事できません(電気工事士法3条。店の受電の形によって第一種・第二種が分かれます)。店の方が自分でブレーカーを替えたり、回路を分け直したりすることはできません。当社は電気工事会社として、照明を入れる前に次の順で見ています。
| 順番 | 見ること |
|---|---|
| 1.現地調査 | 分電盤のブレーカーの定格と、どのコンセントがどの回路か。厨房・空調・音響と同じ回路になっていないか |
| 2.器具の合計 | 入れる器具の消費電力を足し、回路ごとに割り振る。スモーク(ミスト)マシンは照明と別の回路に置く前提で考える |
| 3.足りない時 | 専用の回路を足す工事の見積りを出す。ブレーカーだけを上げる直し方はしない |
| 4.引き渡しの前 | 全部の器具を同時に点けて、スモークも焚いた状態で、ブレーカーが落ちないことを確かめる |
正直に書くと、古いビルのテナントでは、回路を足す工事のほうが照明の工事より大きくなることがあります。物件を決める前に分電盤を一度見せてもらえると、あとから「この台数は入らない」という話になりにくくなります。開業の段取りは開業と照明にまとめました。
照明を足したときにブレーカーが落ちないかはAIに相談する(この話の続きから) 図面や写真があればお問い合わせフォームから担当者へ。